呪術廻戦 第3巻-あらすじ&感想-

呪術廻戦 第3巻-あらすじ&感想-

人間社会の転覆を画策する特級呪霊の真人(まひと)は、術師としての素養がある高校生、吉野 順平(よしの じゅんぺい)を懐柔して自分の手駒にしようと目論む。


◎~ ~◎

「喜怒哀楽は全て 魂の代謝によるものだ」

【前巻まで】伏黒の懸命な抗戦によって稼いだ時間で、なんとか宿儺を抑え込んで肉体の主導権を取り戻した虎杖。しかし、宿儺によって心臓を破壊された身体に意識が戻る事は、自身の死を意味した。肉体の中に保たれていた「生得領域の」中で、宿儺の魂と面会した虎杖(の魂)は心臓の修復を要求するが、その代償として宿儺は不穏な条件を突きつける。一方、呪霊が人間にとって代わる世界の実現を悲願とする特級呪霊の漏瑚(じょうご)は、呪術界のトップである五条 悟を強襲して宣戦を布告する。

第3巻 ~幼魚と逆罰~


呪術廻戦 第3巻
掲載週間少年ジャンプ
著者
評価★★★★
漏瑚(じょうご)達と共に人間社会の転覆を画策する特級呪霊の真人(まひと)は、一般の人間には見えない筈の自分の姿が見える高校生、吉野 順平(よしの じゅんぺい)を懐柔して自分の手駒にしようと目論む。

一方、映画館で発見された変死体を調査していた一級術師、七海 健人(ななみ けんと)は、犯人である呪霊、もしくは呪詛師の居場所を絞り込み単身で対決に臨む。しかし、そこには真人が余裕の笑みで待ち構えており、その予想外の強さに単身での対処は不可能と判断した七海は、一旦退く事を決断する。

七海が真人と交戦している事を知らぬ虎杖は、映画館の監視カメラに写っていた少年、吉野 順平その人に接触して意思の疎通を図る。

順平自身は虎杖に対して友好的な態度を示したものの、順平が真人に接触したそもそもの目的は、自分をイジめていた高校の同級生に対して復讐するた為の「力」を得る事であった。

真人は順平が生まれながらに秘めていた術式を引き出し、その上で更に順平の母親を殺害し、その犯人は学校の級友の可能性があると嘘を刷り込んで復讐の決行を決断させる。

七海の報告から、順平が映画館で特級呪霊に接触した可能性が高い事を懸念した虎杖が高校に駆け付けると、そこには術式を行使して級友を締め上げる順平の姿があった。

解説と感想

いよいよ、ストーリーに手が込んできて、良い意味で複雑に絡まり始めた様子ですね!!

前2巻で五条を強襲した特級呪霊、漏瑚は「火山」のイメージ通りに直情的であり、正面から敵を捻じ伏せる戦い方が好みであったために作戦も前振りもありませんでしたが、本巻に登場する真人は本人曰く、”人が人を憎み恐れた腹から産まれた呪い”です。

恐らく、呪力の総量や攻撃力では漏瑚に劣るのでしょうが、自分の姿が見えた吉野 順平を短絡的に殺害したりはせずに、むしろ手懐けて術式の会得を手伝った上で自分の持ち駒として使うという行動は、実際の人間社会で今日も見られる他者の操縦術です。

また、本巻から登場する一級術師、七海 健人も面白いキャラです。いわゆる、「クソ真面目な堅物キャラ」の類いですが、彼には彼の経験則と矜持があって、五条とはまた違ったやり方で虎杖を導く姿がなかなかにカッコイイんですよね。

単行本ではまだまだ後の話になりますが、ジャンプ本誌では五条が「ある理由」で行動不能になった際、高専側の呪術師を纏めて未曽有のピンチ脱出するという重要な役割を果たしました。

そして、吉野 順平ですが…自分が興味を持って近付いた事や、必要だと思って手を出した事が後々になって自分の首を絞めてしまい、大きく後悔する顛末は人の一生に於いて珍しくありません。

本巻をもう一度読み返してみると、真人に先に声を掛けたのは確かに順平自身であり、そのお陰(?)で遂には自分をイジめた相手を「大きな力」で締め上げる事に成功しています。しかし、その代償として(順番は逆ですが)母親の命を失う事となりました。

前2巻で宿儺が伏黒に語ったように、私達は何の制約や代償も無く、現在の身の丈に合わない「大きな力」を手にする事はできません。

本巻は、我々読者に「自分が理想として掲げる状態を手に入れる為に、何を代償として差し出せるだろうか?」と、今一度、熟慮させる為のリマインダーとなるでしょう。

電書版検索


【次巻】呪術廻戦 第4巻 ~殺してやる~
【前巻】呪術廻戦 第2巻 ~呪胎戴天~