漫画作品に於いて、紙の上に描かれている世界や人物の情報は、創造主である著者が頭の中で構築している全体像の中の、ほんの一部でしかありません。
当然の事ではありますが、毎回、毎話を決められたページ数と決められた期日の中で描き上げなければならないからです。
公式設定資料の必要性
それに引き換え、我々ファンは常に貪欲に情報を求め、時には憶測が憶測を呼んでネット上で議論になったりもします。「あれっ、〇〇〇が身に付けている首飾りは、以前に×××の回想シーンの中で登場した少年が身に付けていた物とソックリだけど、あの少年が成長した姿が今の〇〇〇!?」
「いやいや、×××の回想シーンは数年前の話だから時系列的に云々。本人ではなくて兄弟なのでは??」
といった具合です。
また、作者自身、最初は曖昧な設定のまま見切り発車したものの、後々のストーリーの展開に矛盾点が生じてしまう為、編集と相談した上で「これを公式設定としよう」と取り決める部分もあるかと思います。
そして、いつの頃からか、その作品の世界観と、登場人物の生い立ちや人間関係などを詳細にまとめた、いわば「公式設定資料集」とも呼べるものの発表が人気作品には付き物となりました。
鬼殺隊見聞録、その豪華なる内容
もちろん、ワタクシが現在、熱狂心酔している「鬼滅の刃」も例外ではなく、魅力的な登場キャラクターが増える度に「謎」も増え、Twitter上で連日連夜の議論を呼んでいました。今週の冨岡さんの回想の最後、選抜試験が終わって目覚めた冨岡さんの横にいる人が村田さんっぽいんだけど、同期なんだろうか。— 🌸🍒🀄📕やくとら🌸🐈🍄🌌XV (@jagdtiger_128mm) October 20, 2018
ってなモンですww
そんな折、以前から「出るだろう」と予想されていた公式設定資料集が、遂に発売された次第です。
全216ページに「これでもか!」と詰め込まれた、その豪華絢爛たる内容は以下の通り。
主要登場人物の誕生日や年齢、趣味などの詳細なプロフィール
通常、連載中の作品に於いて、登場人物の詳細な出自(生い立ち)が全員分、ストーリーの中でキッチリと語られる事はありません。しかし、前述したように我々ファンは貪欲ですので、例えば「主人公の〇〇〇が20歳の大学生であるならば、それよりも若く見える×××は現役の高校生なのだろうか?」といった具合に、常にキャラクター同士の相対的な立ち位置を気にします。この鬼殺隊見聞録では、そういった各キャラクターの年齢や出自が詳細に記されており、「あの時、あのセリフがこのキャラの口から出たのは、こういう理由だったのか!!」と、納得できる事でしょう。
ミニイラスト付き「大正コソコソ噂話」大放出
単行本の各話の間に作者の手書きで挿入される、補足情報(?)である「大正コソコソ噂話」を楽しみにしている読者も多いでしょう。これも各キャラクター毎に新たな情報が設定されており、例えば伊黒 小芭内(いぐろ おばない)が首に巻き付けている”蛇”の名前なども、ここで明らかにされています。
本書だけの描き下ろし「キメツ学園」特別編
いわゆる「現代パロディー」なるジャンルも、時代物の作品には必須のサブコンテンツとなりましたね。特に鬼滅の刃という作品は、そもそものテーマが「仇討ち」であり、常に暗澹たる雰囲気が付いて回りますので、適宜に気持ちを切り替える為にも、こういったパロディーは有り難いですね。
連載用ネーム『鬼殺の流』の三話分を初公開
個人的には、これが今回の目玉なのではないかと思います。鬼滅の刃のベースとなった「JUMPトレジャー新人漫画賞」の佳作受賞作品である『過狩り狩り』については、今やファンが広く知るところとなっていますが、連載決定直後の段階では、タイトルは未だ「鬼滅の刃」ではなく「鬼殺の流」であり、主人公も「竈門 炭治郎」ではない事が分かります。
連載作品て、こんな風に練り上げられていくんですねぇ…