フールナイト 第2巻-あらすじ&感想-

フールナイト 第2巻-あらすじ&感想-

霊花が動き回って連続殺人を犯す!?霊花の「魂の声」を聴ける特殊能力を身に付けたトーシローが、その犯人(?)の姿を目撃した次の瞬間…



「その化け物を生み出したのは
 ほかならない転花制度です」


  • 第 9話「番」
  • 第10話「ごめん」
  • 第11話「痕跡」
  • 第12話「将来」
  • 第13話「死なせるな」
  • 第14話「悪い」
  • 第15話「化け物を生み出したのは」
  • 第16話「許せない」
  • 第16話「アイヴィー」

【前巻まで】精神病の母親との極貧生活に絶望したトーシローは、1,000万円の転花支援金を目当てに転花施術を受ける。その結果、霊花が発する「魂の声」を聴けるようになったトーシローは、その能力を買われて国立転花院に臨時職員として就職する。末端の部署に配属されたトーシローに充てがわれた最初の仕事は「父の霊花を探して欲しい」という捜索依頼だった。

第2巻 あらすじ


フールナイト 第2巻
掲載ビッグコミック スペリオール
著者
評価★★★☆☆
「父の霊花を探して欲しい」という音大生からの捜索依頼を見事に果たしたトーシローは、その達成感よりもむしろ、自分も精神病の母親から解放されて自由になりたいという思いを強くする結果となる。

捜索依頼者から支払われた報酬で母親を精神病院に入院させた後、トーシローは絵を描いたりピアノを習ったりと、自分の人生に残された少ない時間の中に「生きる意味」を見出す為に、懸命に足掻き始める。

その一方で、世間を震撼させている「足跡を残さない連続殺人犯」の正体が「転花途中の人間」なのではないか…と予想した警察は転花院に協力を要請し、殺害現場の実況見分にヨミコが派遣される。

その結果、ヨミコ自身は「十中八九、転花途中の人間の犯行である」と断定するも、それと同時に「人としての足跡が残らないほど転花が進行しているのに、短期間に20人もの人間を殺せるほど活発に動き回れるものなのか?」という疑念をも抱く。

そんな最中、同一犯の犯行によるものと思われる被害者が、重体の状態でトーシローやヨミコが所属する第4転花院に運び込まれる。

唯一の犯人目撃者を死なせるわけにはいかないとの、警察側の一方的な都合によるゴリ押しで転花施術が実施された結果、被害者は一晩で完全に霊花と化し、口頭による事情聴取が不可能となってしまう。

対処に困ったヨミコはトーシローを呼び出し、被害者の霊花から殺人犯の特長を聞き出せないかと頼み込むが、この時、ヨミコが目にしたのは「自身の腹部から伸びた蔓(つる)を霊花に絡ませて交信する」という、トーシローの真の能力だった。

これに驚きと罪悪感を覚えたヨミコはトーシローを食事に誘うが、その直後…凶刃ならぬ「凶蔓」がヨミコを襲う。

解説と感想

この巻で改めてクローズアップされるのは、単純なようでいて複雑なトーシロー自身の胸中です。霊花の捜索依頼を見事に果たしたにも関わらず、転花院での仕事にやり甲斐を感じる…とはならず、あくまでも金の遣り繰りと今後の身の処し方に焦って奔走します。

子供の頃は明るくて良い奴だったんだけど、大人になってから、それまでの不勉強が祟って苦労するという典型例ですね。
拙者
あっ、ブーメランでした、サーセンww

そして、もう一つ、トーシローとヨミコの関係性についてですが…

現時点では決して恋愛感情にまでは至らないのですが、それでも、お互いの良い部分をちゃんと尊重し合っている事がよく分かり、やはり、幼少期に育んだ友情というのは後々になっても互いを助けるんだなぁ、と少し救われた気持ちになります。

さて、この巻から連載現時点(2022年12月)まで一貫して続くキーパーソンとなる存在が、「IVY」(アイヴィー)と呼ばれる「転花途中の連続殺人犯」と、「転花反対派」の政治的な集団です。

前1巻の冒頭(プロローグ)で、

 転花希望者には支援金として1,000万円が国から支払われる為、貧困世帯の者が家族を養う最後の手段として故意に毒物を摂取し、自殺的に転花施術を受ける事が社会問題にもなっていた。

と書きましたが、やはりと言いますか、それだけの説明でサラッと終わるワケはありません。

その事実が、この作品の根本的な背景と最大の焦点となっていく様子であり、今後、トーシローは「アイヴィー」と「転花反対派」の人々と何度も衝突し、その規模は単なる「一つのお役所の仕事」を大きく超えていきます。

はたして、そこまで大きな社会問題の渦に否応なく飲み込まれたトーシローが、自身に残された二年間という時間の中で問題を全て解決し、その後、納得のいく「生きる意味」に辿り着けるのか…

個人的には、どう考えても悲しい結末しか予想できません。

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