機動戦士ガンダム サンダーボルト 第1巻-あらすじ&感想

機動戦士ガンダム サンダーボルト 第1巻-あらすじ&感想

ビッグコミック スペリオール掲載『機動戦士ガンダム サンダーボルト』の解説と感想

~もう一つの一年戦争~

さて、ワタクシのような1970年代生まれ、つまり「1stガンダム世代」にとっては、ガンダムという単語は戦闘ロボットを指すと同時に「アムロとシャア」という二人の人物をも指す言葉であります。

当然の事ではありますが、21世紀現在まで連綿と続くガンダムの名を冠する作品群は、それまで戦車と戦闘機で行っていた戦争という行為が「遂にはロボットに乗って宇宙で戦うようになりました」と言いたいだけではありません。

良くないと解り切っている戦争
それでも起きてしまう戦争
仕方がないと言ってはいけない戦争

それでも仕方なく起こしてしまう戦争

そうした、戦争にまつわる人間の心の機微と葛藤を二次元映像に凝縮したのが1stガンダムという作品であり、それを代表させられたのが、アムロ・レイとシャア・アズナブルの二人だったわけです。

しかし、これまた当然の事ですが、なにもその二人だけが連邦軍とジオン軍を代表して戦っていたわけではありません。

誇りを貫いて散った仲間
涙と共に撃ち抜いた敵
苦悩の末に見捨てた仲間
嘲笑と共に逃がした敵

本記事では、戦争という極限状態に置かれた人間が何を思い、そして次に何を選択し実行するのかを「別の角度から見た一年戦争」という背景描写で描いた漫画作品、「機動戦士ガンダム サンダーボルト」を紹介、解説したいと思います。

掲載:ビッグコミック スペリオール
著者:おおたがき やすお

プロローグ

宇宙世紀0079、地球連邦とジオン公国が争う一年戦争の末期、サイド4のスペースコロニー群「ムーア」はジオン軍の攻撃により破壊され、多くの住人が命を落とした。
破壊されたコロニーや撃沈された戦艦の残骸が無数に漂う暗礁宙域では、ぶつかり合い帯電したデブリ(宇宙ゴミ)によって絶えず稲妻が閃くようになり、いつしかそこは『サンダーボルト宙域』と呼ばれるようになった。

第1巻 あらすじ

機動戦士ガンダムサンダーボルト 第1巻

ジオン軍によって破壊されたスペースコロニー群「サイド4 ムーア」。
その生存者で構成された地球連邦軍所属部隊「ムーア同胞団」は、故郷であったサンダーボルト宙域の奪還を悲願とし、同宙域に駐留するジオン軍を殲滅せんとしていた。

対して、連邦の進軍を足止めせんとするジオン軍も、傷痍兵(過去の戦闘により障害を負った兵士)の戦闘データ採取を目的に組織された「リビング・デッド師団」を展開。

ムーア同胞団に所属しながらも、前首長の実子という自らの立場に束縛される事を疎ましく思うイオ・フレミング少尉と、過去の戦闘により両足を失い、現在はリビング・デッド師団でエーススナイパーとして活躍するダリル・ローレンツ曹長は、戦場で対峙した際、互いに悟るのだった。

この敵とは、どちらか一方の死を以て決着するまで何度でも遭遇し、戦う事になる、と…

解説と感想

子供の頃の興奮に、よりリアルな「大人の本音」をスパイシーに加味して、現在の作画技術で鮮烈に蘇らせた「別の角度から見た一年戦争」が本作、サンダーボルトであるわけですが、ザクやドム、ゲルググといったお馴染みのモビルスーツが登場する一方で、アムロやシャアを始めとしたアニメ版1stガンダムに登場したキャラクター達は(存在を匂わせながらも)基本的に登場しません。

本作の主人公は、あくまでも(アムロとは別の)連邦側のエースであるイオ・フレミング少尉と、(シャアとは別の)ジオン側のエースであるダリル・ローレンツ曹長です。

本1巻を手に取って何よりも驚くのは作画の緻密さでしょう。
アニメの1stガンダムが放映されていた当時の漫画の作画技術では、まず描く事が不可能であったメカ類の緻密な書き込みが、ちゃんと立体感を伴って表現されている事に驚くばかりです。

「大人の事情と本音」という登場人物たちの泥臭い心理描写とは裏腹に、コンピューターによる最先端の技術で描かれた「フルアーマー・ガンダム」の美しさが、「アンバランスの美学」とでも呼ぶべき本作の最大特徴となっています。


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